チーフ・ラビがエバンジュリカンと距離を置き始めた

2007年9月24日

 エバンジュリカンといえば、世界で最もユダヤ人支持で知られている、キリスト教徒のグループだ。彼らが集めて、イスラエルに送る援助の寄付金は、われわれ部外者には、想像も付かない額に上っているようだ。

 したがってこれまで、イスラエル側もエバンジュリカンの団体が、エルサレムを訪問するに当たっては特別の対応をし、受け入れていた。

 日本の一部グループ(自分たちはユダヤ人だと思い込んでいる人たちのグループなど)も、イスラエルへの入国に当たっては、特別な配慮をしてもらっているということだ。

 イスラエルのユダヤ人にしてみれば、周囲を敵国であるアラブに囲まれたなかで、自分たちの国を守っていくためには、外部に出来るだけ多くの味方を、持つ必要があったのであろう。

 ところが、最近になってイスラエルのチーフ・ラビが、「エバンジュリカンとの交流をやめろ」と言い出したのだ。それは、エバンジュリカンがキリスト教の宣伝をし、ユダヤ教徒をキリスト教に改宗させようとしているからだ、というのだ。

 もちろん、エバンジュリカン側は、このチーフ・ラビの指摘を、全面的に否定している。彼らはユダヤ教徒に対し、キリスト教への改宗を働きかけてはいない、と明確に否定した。

 エバンジュリカンが何故、ユダヤ教徒とイスラエルを支援することに、熱心なのかについて考えると、あるいはこのチーフ・ラビの魂底にある、変心の理由が分かるかもしれない。

 エバンジュリカンのようなキリスト教原理主義団体は、イエスの再臨を信じており、そのためには中東の地で、最後の戦争(終末戦争)が起こる必要がある、と考えているのだ。

 そのためには、イスラエルを支援し、アラブとのあいだで、第三次世界大戦が起こらなければならない、といった考え方をしているのだ。こうしたことから、アメリカのエバンジュリカンが、西岸地区でパレスチナ人に対し、テロ殺戮を行ったこともある。

 しかし、イスラエルを神がユダヤ人に与えた地として、世界中から集まってきたユダヤ人にとっては、こうしたエバンジュリカンのような親切の押し付けは、きわめて迷惑で危険なものになりつつある。

 イスラエルの建国から第4次中東戦争、あるいはキャンプ・デービッド合意の頃までは、外部の支援が重要であったが、外国の過激な組織の支援は、イスラエルのイメージを悪化させ、結果的にはイスラエルを、世界から孤立させてしまうことにつながろう。(まさにそれが過激な支援団体の狙いであろうが)

 今回のチーフ・ラビのエバンジュリカンに対する対応の変化は、イスラエルのユダヤ人が、近い将来、彼らに襲い掛かってくるであろう、脅威を予期してのものであろう。

「ユダヤ人が世界一有能で諸悪の根源である」といったイメージは、ユダヤ人に対する正しい評価判断ではない。彼らも混乱する世界の流れのなかで、苦しんでいる地球市民の一部に過ぎないのだ。