ムバーラク大統領にあせり?

2007年9月19日

 エジプトの次の大統領に、誰が就任するのかという話題が語られ始めてから、もう10年も続いているのではないか。その予想のほとんどが、ムバーラク大統領の次男ガマールが就任するというものだった。

 ガマールが次期大統領に就任するために、ムバーラク大統領はこれまで与党内の人事や、学者、経済人との関係構築と、種々の手を打ってきた。しかし、いまだにガマールでは、大統領職が務めきれないのではないか、という不安がムバーラク大統領にはあるようだ。

 次男の政治家としての成長が、思うようにならないなかで、ムバーラク大統領の健康状態が次第に不安を抱かせるようになってきた。彼が高齢であることに加え、もともとムバーラク大統領には持病がある、癌を患っている、といったうわさが流されてきていた。

 最近、そのムバーラク大統領が、常軌を逸したとしか思えない、決定を下している。それは、ムスリム同胞団がラマダンの月に、貧民救済を主な目的とする、食事の提供を禁止したのだ。  これはあくまでも宗教行為であり、善行なのだが、それですらムバーラク大統領は、ムスリム同胞団の人気取り政治活動、と認識したのであろうか。述べるまでもない。この決定は逆効果を生むものと思われる。

 エジプトのラマダンの風物詩ともなっている、エフタール(断食が終わったときに食べる食事)のテーブルが、町のあちこちに並ぶのが、見慣れた光景だったのだ。それが禁止ということになると、カイロっ子は非常に残念がるだろうし、ムバーラク大統領の決定に反発するだろう。

 加えて、ムバーラク大統領の健康状態に問題がある、という記事を掲載した編集者が投獄される、ということも起こっている。もちろん、エジプトのマスコミ界は猛反発しているのだが、ムバーラク大統領にしてみれば、自分が健康であるということを、国民に強調するほうが優先だと考えたのであろう。

 しかし、こうしたムバーラク大統領の一連の決定は、どこか余裕のなさを感じるのだが。彼の健康状態が優れない。次男の政治家としての、エジプト社会内部での評価がいまひとつである、ということから、ある種の焦りが出始めているのかもしれない。結果は思いも付かないような方向に向かうかもしれない。