アメリカがまた、「イランを攻撃する」と予告している。その時期はアメリカの大統領候補が、共和党も民主党も決定した後、ということであ、今後8－10ヶ月の後だということだ。 　しかし、現実にそれが可能なのであろうか。攻撃そのものは可能でも、その後の展開が、アメリカにとってあるいは世界全体にとって、悲劇的なものになる危険性が、イラン攻撃にはある。

　これまで多くの国際政治の専門家が、イラクに対するアメリカの攻撃は、中東地域における、イスラエルの安全を確保することにも、目的があったとし、イランも早晩攻撃されるだろう、と予測している。

　しかし、イスラエル自身は今回の、アメリカによるイラン攻撃が行われた場合、相当のダメージを覚悟しなければならないのではないか。イスラエルのエルサレム・ポスト紙は、アメリカがイランを攻撃すれば、イランはイスラエルを攻撃する、と予測している。

　アメリカがイランを攻撃する表面的な理由は、イランが核開発をすることが、地域の安定を破壊するからだ、と説明しているが、もしアメリカがイランの核施設を攻撃したとしても、せいぜい2年程度でイランは修復し、再度核開発に向かえる、と予測する者がほとんどだ。

 　アメリカはイランの核開発施設のほかに、革命防衛隊の基地や、ガス・パイプラインに対する、攻撃を考えているようだ。ガス・パイプラインに対する攻撃は、ガスの供給が止まることによって、イラン国民がイラン政府に対し、反発することを期待してのものだが、そのとおりになるだろうか。場合によっては、全く逆の効果が生まれる可能性もあろう。

　こうして考えてみると、アメリカのイラン攻撃は、あまりにも杜撰なもののように思えるのだが。もし、アメリカによるイラン攻撃が実行されれば、イランは確実にペルシャ湾の出口、ホルモズ海峡を封鎖させるであろうし、その能力を持っている。その結果、東アジアの国々をはじめ、世界中の湾岸の石油、ガスに依存する国々は、甚大な被害をこうむることになるのだ。その状況は、世界経済の崩壊ではないのか。