タジキスタン報告ー経済

2007年9月17日

 タジキスタンは特別な産物がないことから、ウズベキスタンの金、トルクメニスタンのガス、カザフスタンの石油ガスといったような主たる外貨獲得源を有していない。

 しかし、タジキスタンは他の中央アジア諸国とは異なり、周辺諸国や湾岸諸国、ロシアに出稼ぎが比較的自由にできていることから、彼らの送金で国内は比較的裕福な層が成立している。
(他の中央アジア諸国では出稼ぎがし難いのは、金もち層が育つことによって、反体制運動が起こる危険性があるという懸念から、政府が出稼ぎをなかなか許可しない、という国があるのだ。もちろん、自国が豊かであるために、出稼ぎに出る必要を感じない中央アジアの国民もいる。)


 湾岸諸国は述べるまでもないが、ロシアがタジキスタン人にとって、格好の出稼ぎ先となっているのには幾つかの理由がある。More...
第一に、タジキスタンがソビエトにとって、戦略的に重要な地域であったことから、ロシア語の普及が行渡っており、ロシアに出稼ぎに出ても、言葉で困ることがないということだ。

 第二の理由は、ロシア人の技術労働者が、大量に西ヨーロッパ諸国に出稼ぎに出ているために、ロシア国内では労働者が不足しているためだ。
タジキスタン国内で働く者の得る賃金は、月額にして70ドルから200ドル程度だが、出稼ぎ送金で豊かになった層の国民も少なくない。彼ら出稼ぎ
 組みは、手にした金をどのように使っているのか。
第一に、豊かな生活をするというグループが存在知る。
第二に、その資金を元に豪華な家を建てる者がいる。
第三に、その資金でホテル、レストランを開店する者がいる。

 しかし、これらのいずれも資金を集め、新しい産業を興すような形にはなっていない。そのため出稼ぎ送金の合計額が、ある程度以上の額に達しているにもかかわらず、地場産業は成立していない。

 土産店をのぞいてみても、中国製やインド製などで、ほとんどすべてが外国製の安物だけで占められている。タジキスタン製らしいものがあると、それはほとんど隣国ウズベキスタン製であるということだ。

 タジキスタンは世界的には知られていないが、エメラルドやルビーを産出している。これらの宝石の鉱山は、反体制派のグループが抑えており、タジキスタン政府が開発しているわけではない。したがって、宝石の鉱脈があるとはいえ、タジキスタンの家国家的な収入源には成長していない。
反体制派のグループはロシア側と提携し、宝石をカット、研磨し、密売しているが、まだそれほど大きな取引には成長していない。それ以外では金、ラピスラズリーなどがあげられるが産出量は多くない。

 こうした状況を踏まえ、現地の高橋臨時代理大使は、タジキスタンが農業に適した土地であることから、農業製品の輸出を推進すべきだと考えている。そのためには、輸出に耐えうるような、国際競争力のある商品作物を生産するための、農業技術援助が必要であろう。

加えて、湾岸諸国と中央アジア周辺諸国、ロシア、インド、アフガニスタン、パキスタンなどから見て、タジキスタンは中央に位置していることから、タジキスタンに陸の港施設を建設し、陸上輸送のハブにしたいとも、高橋臨時代理大使は考えている。

 魚を与える援助方式から、まさに魚を釣る技術を教える援助に、切り替えが可能なのがタジキスタンなのかもしれない。日本政府はこのプロジェクトを、ぜひ推進していただきたいものだ。