シリアがトルコの外交に依存

2007年9月14日

イスラエル空軍機がシリアの領土内に領空侵犯し、爆弾を投下するということが起こった。シリアとイスラエルとの関係は現在では、極度に緊張している。それは、双方が相手側の攻撃を懸念した結果、生まれてきた疑心暗鬼というものであろう。

 これまで何度か、このサイトで書いてきたように、シリアとイスラエルとの緊張関係を、緩和させるための外交ができる国は、トルコを置いて他にない。それは、シリアとトルコとの関係が良好であること、イスラエルとトルコとの関係が、それぞれ良好であることを前提に考えた結果であった。

 イスラエルもシリアも、軍事衝突が起こることを望んでいない以上、しかるべき仲介者が現れれば、緊張は緩和される可能性があるということだ。
イスラエルはトルコとの関係を、良好な状態で維持したいことから、アメリカのユダヤ人組織が、アメリカ国内で強引に進めた、トルコによるアルメニア人大量虐殺を非難する決議に対し、不安と不満を述べていた。

 述べるまでもなく、中東地域においてイスラエルが、唯一、安定した良好な関係を維持できている国はトルコだけであろう。エジプトやヨルダンとの間には和平条約を結んだ後、相当の期間が経過したが、普通の関係には至っていない。

 もし、シリアがイスラエルと戦闘状態に至った場合、これらのイスラエルと和平条約を結んだアラブの国々も、しかるべき対応をせざるを得ないというのが実情であろう。

 そのことは、イスラエルがこれまで培ってきた、アラブとの平和的な関係構築の努力は、非常にもろいものであるということがわかろう。しかし、トルコとの関係は、良好でありかつ信頼性の高いものだ。
イスラエルとトルコとの間では、イスラム保守政権(?)といわれるエルドアン政権の下でも、合同軍事事訓練を続けてきているのだ。

 シリアはワリード・ムアッレム外相をトルコの首都アンカラに派遣し、アリー・ババジャン外相と会談を行った。そのなかでトルコ側は、トルコの領土をシリアの攻撃に使わせる意思の無いことを述べるとともに、イスラエル空軍の攻撃について、イスラエル側にその詳細説明を求めることを、シリア側に伝えた。

 こうしたトルコが果たすであろう、中東の緊張緩和の役割は、イランとアメリカの関係においても、シリアとイスラエルとの関係においても、今後、拡大していくものと思われる。それは、ギュル外相の大統領就任で、一層色濃くなっていくことが予想される。つまり、今後当分の間は、トルコが中東地域の主役を演ずることになるということだ。