新体制下のトルコ

2007年9月14日

多くの問題を抱え、もめにもめた結果、最後は数にモノを言わせ、AKP(開発公正党)が推すギュル外相が、第11代目の新大統領に就任して間もない。
その新時代を迎えたトルコだが、国内はある種の自信に満ちた感じを与える。トルコの友人何人もが「新体制と今のトルコをどう思うか?」という質問をイスタンブールの空港に到着早々に向けてきた。それは述べるまでもなく、彼らの自信と誇りを示している。私の友人にはAKP支持者が多いことから、今回の選挙結果を大喜びしているのだ。

 私の彼らに対する答えは「これでトルコ国民の力が結集できるから、トルコは安定と繁栄を実現できるだろう。」というものだった。実際にその傾向が見える。これまで強硬に、ギュル氏の大統領選出に反対していた最大野党のCHPですら、選挙後は政府非難の発言を控え、協調路線をとり始めている。

 CHPにしてみれば、ギュル氏の大統領就任を、全面的に受け入れたのではないとしても、当分のあいだ与党の動きがどうなるのか、様子を見ようということなのかもしれない。AKPはギュル大統領・エルドアン首相体制の下で、外資の導入を軸とする経済、産業の活性化を進めていく方針であり、技術開発に力を入れ、減税策も進めていく方針のようだ。
加えて、民主化と各宗教の自由を保証していく方針も明示している。イスラム保守の政党と、外国のマスコミはAKPについて表現したが、必ずしもそうではないというのが正しい評価であろう。

 これまでのAKPが進めてきた経済政策は、イスラム保守のイメージとはまったく異なるものだった。つまり、欧米が進めようとしている、経済のグローバル化に対して、歩調を合わせてきているのだ。
世界が金余りの状態にあることもあって、トルコが外国からの経済投資に対して、開放化を進めてきたために、ヨーロッパに限りなく近い、という立地条件もあり、トルコは投資対象としてはすこぶる好条件な国ということになる。世界の投資家や企業の目から見れば、トルコはあらゆるものが安価であるという印象を与えてきた。それは土地、労働力とその労働者の質など、全ての面で言えることであろう。

 今後、トルコはそうした自国の発展への成功を、アラブ諸国をはじめとする、中東地域全体にも広めていく方針のようだ。元大統領のスレイマン・デミレル氏は、先週開催された、国際ロータリークラブ主催の「ピース・フォーラム」で、「トルコの歴史的経験と知識というソフト・パワーを生かし、アラブ諸国の平和や発展、民主化に貢献していくべきだ。」と語っている。
 つまり、与党ばかりではなく、野党も元トルコの大統領も、押しなべて今のトルコの発展、上昇気流を支えていこうという動きが感じられる。中東地域の相変わらずの混乱の中では、トルコの進めようとしている地域への安定と発展への努力が歓迎されるのではないだろうか。