サダムの長女をイラクは引き渡し要求

2007年8月25日

 イラクのマリキー政権は、ヨルダン政府に対し、直接と間接にインターポールを通じて、サダム・フセイン元大統領の長女ラガドを、引き渡すよう要求している。それは、彼女がいまだに大金を所持し、イラク政府に対する反体制運動(テロ)を、継続しているからだということだ。 

 しかし、ヨルダン政府はいままでのところ、このイラク政府の要求に応じていない。応じない理由は、彼女が女性であることによる。アラブ世界では、助けを求めてきた女性(女性とは限らないが)をかくまうのは、男性にとって、あるいはその家族や部族の、名誉に関わる問題だからだ。

 しかも、故サダム・フセイン大統領は、ヨルダンに長期にわたり、石油を一部は無償で、一部は安価で供給してくれた恩人でもある。その恩人の娘をかくまうことが出来ないということになれば、ヨルダン王家はアラブ世界で、体面を失うことになろう。
 ウガンダのイデイ・アミン元大統領は、サウジ・アラビアが、イランのパーレビ国王はエジプトが、それぞれ引き取ってかくまっていた。チュニジアはレバノンを追われた、アラファト議長やPLOの幹部をかくまった。

 このように国家の元首以外にも、多くのアラブ諸国は閣僚級の亡命者を、引き取りかくまってきている。アルジェリアやイエメンは、レバノンを追われたPLOメンバーを、長期間にわたってかくまってきていた。

 アラブ社会の面子、客をかばう習慣以外にも、アラブ世界では権力交代が何度となく起こっていることから、「明日は我が身」という感情も働くのかもしれない。いわば、互助の精神なのかもしれないのだ。それをヨルダン政府はどこまで守り通せるのか?