トルコ・イラクがPKK対応討議

2007年8月25日

 イラクのマリキー首相がトルコを訪問し、エルドアン首相との間でPKK(クルド労働党)に対する、対応を協議した。この問題はトルコ側にとっては、最重要課題であり、トルコ政府はイラク政府の対応が不十分であれば、イラク領土への軍事侵攻も辞さない、という強い立場を打ち出している。


 PKKが誕生し、トルコに対する分離独立の活動を始めたのは、1984年からだが、その間にトルコ側は民間人軍人合わせて、4万人程度の犠牲者を出している。

 今回、イラクのマリキー首相がトルコを訪問して、エルドアン首相との間にPKK問題を話し合うことにしたのは、トルコ側が本気で強い対応を考えていることに起因しよう。

 トルコ政府は、アメリカとイラクがPKK排除について、具体的な対応の立場を示さないのであれば、単独で対応すると主張してきたからだ。アメリカはこの難問の交渉を、いまの段階ではトルコとはやりたくないということから、イラクのマリキー首相に、トルコを訪問するよう仕向けたものと思われる。

 結果的には、イラク政府もPKKをテロ組織と認め、排除の必要があることを明言したようだ。しかし、現実には、イラク国内のクルド人の反発を恐れることから、マリキー首相は明確な合意文書にはしたくない、ということではないか。

 述べるまでもなく、イラクの現在の大統領はジャラール・タラバーニ氏であり、彼はクルド人だ。そして、イラク北部のクルド地域は現在、クルド自治政府が統治しており、イラク中央政府の影響力は弱い。

 マリキー首相がトルコとの間で、明確な対応を合意すれば、帰国後に強い反発を受けようし、かといって、不明確な対応をトルコにとれば、トルコを刺激することになろう。

 このように、マリキー首相はまさに板ばさみの状態で、トルコを訪問したということだ。
さて、トルコ側の本音だが、トルコはクルド地区に多数の自国企業を送り込んでおり、クルド地区への軍事侵攻は軍部が望んでいるものの、経済の発展に最大の重点を置いているエルドアン政府と民間は、それほど強くはないのではないか。

 イラク側も物資が運び込まれる、最も太いルートのトルコと、関係が悪化することは望んでいまい。加えて、イラクに駐留するアメリカ軍にとっても、同様にトルコ・ルートは重要だ。

 つまり、今回のマリキー首相のトルコ訪問は、トルコ・イラク・アメリカ三者の面子を保つことに、最大の目的があったのではないかと思われる。もちろん、ある程度のPKK対策がとられもしようが、それは大規模な武力行使には至らないのではないか