イスラエルからの便りートルコはどうなる

2007年7月31日

 イスラエルの知人(トルコ問題専門家)から、彼が書いた次のような内容の論文が送られてきた。あるいはネット上に掲載されていることから、日本人のなかにも目を通している人がいるかもしれないが、やはりそれは少数派であろうから、ここでその論文の要旨をご紹介することにする。

 今月の22日にトルコで行われた選挙結果について、彼は「世俗派が結局のところ政治的革命をすることに失敗した。トルコは福祉国家になった。」と評している。

 トルコ社会の経済はブラック・マーケットが全体の40パーセントを占め、金持ち層はますます金持ちになり、貧乏層はますます貧乏になる、という状況が続いてきた。  イスラーム系政党(=福祉政党)は、この貧富の差を埋める活動をして、国民の支持を増やしてきたというのだ。

 イスラーム系政党が支持を拡大したもうひとつの理由は、EUがトルコの加盟を認めなかったことにもあるとしている。結果的にトルコのエリート層のなかにも、EUへの参加に意味を見出さない者が増大してきているのだ。  トルコがEU加盟に動き始めた頃は、トルコ国民の80パーセントがEU加盟を希望していたが、最近では30パーセントの国民しか、EUへの加盟を希望しなくなっている。

 さてトルコの世俗主義を代表し、かつ守護者の立場にあるトルコ軍は、今後どのような行動に出るであろうか。エルドアン首相が選挙での勝利と、法改正の後に、ギュル外相を大統領に擁立するとなれば、不測の事態が起こる可能性もあろう。  しかし、それとは別に、現体制はイスラエルとの関係を、緊密な状態に維持するものと思われる。

 この論文はきわめて意味深長な内容であることを、強調しておきたい。いまイスラエルにとって、トルコは非常に微妙な関係にあると同時に、重要な国にもなっているのだから。