ハマース政府の公務員給与支払いとスポンサー

2007年7月31日

 イスマイル・ハニヤ氏が首相のハマース政府が、いままで滞っていた公務員と治安要員に対して給与を支払い始めた。これは注目に値する出来事だ。というのは、既にマハムード・アッバース議長はハマース政府を認めておらず、ファイヤード氏を首相とする新内閣を設立しているからだ。

 今回、イスマイル・ハニヤ氏が率いるハマース政府が、公務員と治安要因に対して給与の支払いを始めたということは、マハムード・アッバース議長との関係修復を、完全に拒否したということであり、今後は統一政府結成の呼びかけがあっても応じないのではないか。

 もちろん、ハマース政府が給与を支払う対象は、ファタハ政府が給与を支払った、ファタハ支持の治安要因や公務員は除かれるということだ。  そこで気になるのは、ハマース政府がどこからその資金を得たかということだ。常識的には、イラン政府やイランの財団が考えられるが、それだけではあるまい。サウジアラビアをはじめとする、湾岸アラブ諸国政府からの資金援助もあるものと思われる。

 ここでも、アラブは複雑な構造を見せているということだ。つまり、反米の立場を採るハマース政府に対して、湾岸の親米諸国が資金を提供している、ということだ。  これと同じことが、イラクの場合にも起こっている。反米のスンニー派組織に対して、サウジアラビア政府などが資金を提供していることが、アメリカから問題視されているのだ。

 しかし、サウジアラビアをはじめとする湾岸アラブ諸国政府は、国内のイスラーム保守派に対して、アメリカから政治・外交的に独立している、という立場を示す必要があるからだ。加えて、やはりイランのイラク・シーア派に対する影響が強まることに対する、不安が湾岸アラブ諸国の間では、高まっているからでもあろう。  サウジアラビアのアブドッラー国王は、イラクのヌーリー・マリキー首相を、イランの傀儡だと激しく非難してもいる。このアブドッラー国王の発言は、アメリカにとって不愉快極まりないものであろうし、そのことをアブドッラー国王は十分承知しているが、国内対策上必要だということであろう。