ガザの戦闘ヨルダンのパレスチナ人に影響

2007年7月27日

 ガザで起こったパレスチナ人同士の殺し合いが、ヨルダンに居住するパレスチナ人の間にも、大きく暗い影を落としているようだ。  ヨルダンは人口の半分以上、あるいは7割以上がパレスチナ人で占められている。そのパレスチナ人たちは、ほとんどが2級国民として元々のヨルダン人に比べ、条件が悪い立場に立たされている。

 このため、ヨルダンに居住するパレスチナ人たちは、野党の組織を幾つも結成しているが、パレスチナ解放という点では、ほぼ一致して行動してきていた。それは彼らに共通する目標があったからだ。つまり「パレスチナの地に帰還したい」という目標だ。  しかし、今回ガザでファタハとハマースが武力衝突したことによって、パレスチナ人たちが、大まかに言って二つのグループに分裂したようだ。

 ひとつはイスラーム系各組織の集合体であり、もうひとつのグループは民族系各組織の集合体だ。  ヨルダンのムスリム同胞団組織は、ハマースがムスリム同胞団から生まれた組織であることから、ハマースを基本的には支持しているが、今回ハマースがガザで武力に訴えて、ファタハと衝突したことについては、必ずしも全面的に認めるという立場はとっていない。

 ハマースが武力に訴えてファタハと対立衝突したことに対して、ヨルダンのムスリム同胞団組織は批判的な立場もとっている。ムスリム同胞団はそのような立場をとることによって、ヨルダン国内のパレスチナ人の団結を、維持して行こうということであろう。  しかし、今後西岸のファタハ組織からは、ハマースを支持するヨルダンのパレスチナ組織に対し、圧力を加えるよう指示がある可能性があるだろう。そうすることによって、ファタハはハマースに対する支援を押さえ込むことが出来、勢力の回復をしようとするからだ。

 もっと言うならば、ハマースによってファタハが万が一西岸から追い出され、ヨルダンに逃れたときに、そこに堅固なファタハ支持組織が出来ていることを期待するからであろう。 ガザで起こったファタハとハマースの武力衝突が、ヨルダン国内のパレスチナ各派を分裂させたことは、短期的にはヨルダンにとっては好都合なことであろうが、長期的には危険なことの始まりになる可能性がある。

 何事も運と不運はコインの表裏のようなものだということか。