再現する湾岸諸国のエジプト投資熱

2007年7月22日

 クウエイトがイラクによって軍事侵攻された1990年に、多くの湾岸諸国の人たちがエジプトに家を買い、車を買い、会社を興し、土地を買う動きに出た。
それは湾岸諸国の人たちにとって、エジプトがアラブの中の大国であり、最も安全な国だという認識が広がったからであろう。

 もし自分の国が外国に軍事侵攻され占領された場合、エジプトに居を構えていれば心配は無い、という判断からであったと思われる。

 確かに、クウエイトはイラクによって軍事侵攻された後、イラク領土の一部に併合され、少なくともイラク政府の認識では、地上から消えてしまったのだ。イラク軍の侵攻でクウエイトは国家として存在しなくなったのだ。

 結果的には、アメリカが世界に呼びかけ合同軍を結成し、クウエイトを占領するイラク軍を追放してくれたために、クウエイトは国家として再度存在することになった。

 クウエイトを始めとする当時の湾岸諸国住民の、エジプトに対する投資熱は異常なものであった。 それだけイラク軍のクウエイト侵攻は、大きなショックを与えたということであろう。
さて、今なぜ湾岸諸国住民はエジプトに対する、投資熱を上げているのであろうか。それは一般的には否定的となっている、アメリカ軍によるイランに対する攻撃の可能性を、湾岸諸国の住民が恐れているからではないのか。

 湾岸諸国の住民だけが、アメリカのイラン攻撃を懸念しているのではない。湾岸諸国政府も同様に、その危険性を懸念しえいるのだ。そのために、クウエイトや他の湾岸諸国政府は、控えめながらもアメリカに対し、自国領土からのイランに対する攻撃をしないよう要請している。
また、湾岸諸国の中には、自国からのイランに対する攻撃だけではなく、イランに対する攻撃そのものにも、反対し始めているのだ。在京の湾岸のある国の大使は、イランに対するアメリカの攻撃が世界全体に与えるダメージについて、大きな懸念を抱いていると語っていた。

 湾岸諸国の人たちや政府にとっては、可能性が低下したとされているアメリカ軍のイラン攻撃に対し、いまだに強い懸念を抱いているということだ。その結果として、エジプトに対する投資が増加し、土地の価格がうなぎのぼりに上がっている。エジプトでは土地以外の物価も、押し上げることになっている。

 結果的に、この湾岸諸国のエジプトに対する投資ブームは、エジプトの庶民の生活に、次第に重圧となってきている。エジプトの庶民にとっては、土地の値上がりは、ただ生活苦だけを押し付けるだけであり、なかなか彼らの収入を増やすまでには至っていないのだ。

 7月14日付けのエジプトの新聞は、石油価格が77ドルを超えたことを一面で伝えている。その石油価格の値上がりの理由は何なのか、アメリカ軍のイラン攻撃を懸念する人たちが、世界にはいまだに多いということであろうか。あるいは、石油業者や投資家の、石油かかっく引き上げのための、口実に過ぎないのであろか。