ソフトなイラク三分割という米の新提案

2007年7月 6日

 アメリカがイラクに軍事侵攻してから、すでに4年が過ぎたが、いまだにイラク国内では不安定な状態が続いている。この期間派兵されたアメリカ軍兵士は、公式発表でも、すでに3500人以上が死亡している。

 イラク国内は内戦状態になっていることを認めるべきだ、という考えと、内戦状態にあることを認めるべきではない、という考えがアメリカ国内では飛び交っているが、毎日、確実にアメリカ軍兵士の中から犠牲者が出ているだけでなく、イラク国民の中からも多数の犠牲者が出ている、という現実は動かしがたい。

 そこで、何とか現状から逃れようとして、アメリカの二人の学者が新提案を発表した。一人はジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院のエドワード・ジョセフ氏、もう一人はブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン氏だ。
彼らの考えでは、イラクを三分割し、クルド、シーア、スンニー住民をそれぞれの地域に、定住させるというものだ。

 クルド人については、すでに自治区が出来上がって、分離独立状態にあり、当地域は安定化に向かっているが、スンニー派地域やシーア派地域については、この限りではない。
両氏の考えでは、シーア地域に居住するスンニー派住民は、スンニー派地域に移住させ、スンニー派地域に居住するシーア派住民は、シーア派地域に移住させるというものだ。
もちろん、その計画を実行するに当たっては、膨大な予算が必要になるであろうことは、両氏もわきまえている。しかし、居住地を区分することによって、内部でのテロは激減するだろうというものだ。

 この考えについては、アブドルアジーズ・ハキーム師を中心とするSIICは、以前からシーア派地域を分離独立させたいと考えており、なんら反論はあるまいが、もう一人のシーア派リーダであるモクタダ・サドル師は、イラクを分割することに強く反対している。
このイラクのソフトな三分割案は、あまり意味が無いと思うのだが,あるいは、ブッシュ政権のアメリカ国内での不評をごまかすための、一時的な提案かもしれない。