マハムード・アッバース議長が率いるファタハは、人質になっていたアラン・ジョンストン記者を放置し、解放の努力をしなかった。結果的にはハマースが解放することになった。
述べるまでも無く、このハマースの成果は国際的に評価されることとなろう。ファタハのコントロール下では、法による秩序も治安も保障されていなかったが、ハマースがガザを支配した結果、法の秩序が保たれるようになった、ということであろう。

　今回のBBC記者解放の後、欧米ロシアなどは、パレスチナの交渉相手をこれまでのような単数形では無くではなく、複数の表現をするようになっているが、それはマハムード・アッバース議長のファタハに加え、ハマースも交渉相手として、考慮していることを示すものであろう。
同じように、イギリスのブラウン首相も、マハムード・アッバース議長に対する謝意に加え、ハマースのイスマイル・ハニヤ氏の名前も挙げている。

　ハマースのイスマイル・ハニヤ氏もアラン・ジョンストン記者の解放を、政治宣伝に活用すべく、彼との写真撮影を行い、パレスチナの旗とエルサレムのアクサ・モスクを施した箱をプレゼントしている。

　こうしたイスマイル・ハニヤ氏とハマースの対応を、にがにがしく思っているのはファタハの幹部に共通したことであろう。ヤーセル・アブドルラッボ顧問は「これはハマースが仕掛けた国際法遵守のポーズに過ぎない。」と非難している。

　しかし、ではなぜいままでファタハは長期間にわたって、人質解放に何の努力もしようとしなかったのか、ということを問われよう。もし、ハマースと今回の人質犯との間に関係があったとしても、ファタハには何も出来なかったというのだろうか。

　ファタハ側がハマースの今回の快挙を非難すればするほど、ファタハに対する国際的な評価は下がるものと思われる。同時に、いまだに人質となり、未解決の状態にあるイスラエル兵の釈放に、ファタハになにができるかが問われることになろう。もし、ハマースがこの解放にも成功した場合、いったいファタハはどう国際社会に説明するのだろうか。