アメリカによる対イラン低烈度戦争は始まっている

2007年6月26日

 アメリカはイランに対して、何時攻撃を仕掛けるのか、という疑問が世界中で飛び交って久しい。3月説、4月説、6月説と、既に幾度もの開戦予想が立てられたが、現実には起こらなかった。

 それではアメリカは、イランに対する戦争をあきらめたのだろうか。そうした雰囲気の中から出てき始めたのは「アメリカはブッシュ政権の時代ではなく、次の大統領の時代になってから本格的にイランを攻撃する」という説だ。

 しかし、ブッシュ大統領が出来なかった戦争を、次の大統領が実行するのは、そう容易ではあるまい。

 しかも、その頃には、アメリカ国内世論がどう変わっているか、次期大統領に誰が就任するにしろ、読めないのではないか。もちろん、政権側は世論をあおり、世論を導いていけばいいのだ、という考えもあろうが...。

 現時点になっては、空爆によって始まる本格的な戦争の起こる可能性は、すこぶる限られてきているのかもしれない。しかし、だからといってアメリカ政府は、イランに対する攻撃を断念しているのではないと判断すべきであろう。

 ブッシュ大統領は既に、イランに対する戦争を開始しているのではないか、と私は最近になって思うようになってきた。その戦争は一時期もてはやされた「低烈度戦争」だ。

 つまり、敵国に対し、テロを仕掛け民心を混乱させ、国内不満をあおるために外部から体制批判を行い、国民の生活を窮乏させるために、国際的な経済制裁を強化するというやり方だ。

 今のイランを考えてみよう。インフレ率は政府発表によれば17パーセントだが、イラン中央銀行の統計によれば23パーセントになる。失業率も政府の発表では13パーセントとなっているが、公式統計調査では24パーセントに達しているのだ。

 ここで政府発表とは異なる数値を発表している、イラン中央銀行や統計調査担当局は、一体誰の指示でこうした数値を発表しているのだろうか、という疑問が沸いてくる。

 他方、女性の服装の乱れによる逮捕者は激増しているし、学生の政治運動に対する締め付けも厳しさを増してきている。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙は「イランでは時計が1979年代に逆戻りしている」と最近のイランを評している。

 こうした国民の動きと、それに対する政府の強硬な対応の他にも、アゼルバイジャンやバルチスタン、クルド地域、イラン南西部のアフワーズからの、テロ活動も活発化しているようだ。これを低烈度戦争といわずに、何と表現すればいいのだろうか。アメリカのイランに対する戦争は、既に始まっていると判断すべきではないのか。

 それでは、そのアメリカによる対イラン低烈度戦争が、今後どのような影響を世界に与えるのかについては、6月28日午後6時から行われる東京財団のフォーラム「緊張する米イラン関係と世界」の会場で詳しくご説明したい。