ガザの出来事はアラブ全体制に対するクーデターだ

2007年6月18日

 ガザで起こった出来事はパレスチナ人同士の衝突だ、と受け止めている人が多いだろう。 しかし、この出来事はパレスチナのPLO、 あるいはファタハというパレスチナの支配層、あるいは故アラファト議長を含むマハムード・アッバース議長らパレスチナ幹部に対する、人民蜂起であったというのが正しい理解ではないか。またアラブ全体制に対するクーデターであったのではないかと思えてならない。

 ガザのマハムード・アッバース議長宅が、ハマースの戦闘員に占拠された写真がネットを通じて流されているが、その中にはマハムード・アッバース議長と故アラファと議長の写真を踏みつけている、パレスチナ人の戦闘員の姿が映し出されていた。 ガザのストロング・マンと呼ばれていたムハンマド・ダハラーンはこの戦闘のさなかには、カイロに病気治療という名目で逃避していた。さすがにファタハの幹部が西岸に逃げ出した段階で、マハムード・アッバース議長の元に駆けつけはしたが。

 彼、ムハンマド・ダハラーンは英語ヘブライ語をアラビア語同様に使いこなし、イスラエルとアメリカが寵愛する人物だ。マハムード・アッバース議長の後継者になるのではないかといううわさも、これまで何度となく流れていた。 今回のガザでの戦闘の勝利の後、ハマース側は多くの証拠物件や資料をガザのファタハ系事務所から押収しているが、今後その中から、とんでもない資料が公にされることになろう。

 ファタハとアメリカの関係、ファタハとイスラエルとの関係、故アラファト議長やマハムード・アッバース議長とアメリカ・イスラエルとの関係や密約も、その中には含まれている可能性が高い。 そして、ガザのファタハ系の事務所からは、日本を含む外国から送られた援助が、どう山分けされ使われていたのか、ということに関する資料や証拠も出てこよう。

 故アラファト議長もマハムード・アッバース議長も、援助金の使い方はきわめて「どんぶり勘定」であったことから、援助した側の国にとっても、これらの資料がハマースの手に渡ったということは、不都合極まりないものになる可能性がある。 パレスチナの権力者たちとアラブ各国の権力者たちとの関係でも、公表されては困ることがいくらでも出てこよう。それらの問題をどう隠蔽するかを、各国は今から考えているのではないか。そしてマハムード・アッバース議長は、必死にその事実(スキャンダル)を否定することに力を注いでいこう。

 そのような流れの中で、果たしてマハムード・アッバース議長はパレスチナ大衆の支持を取り付け、パレスチナ人を支配していけるのだろうか。イスラエルはマハムード・アッバース議長がハマース切り離しをしたことを、歓迎しながらも、ガザにも援助を行うと言い始めている。 ガザで起こったクーデターは、ほんの序盤戦を過ぎた段階ではないのか。